男性着物に関する礼装から普段着まで! シチュエーションごとのコーデを知る

2016年7月1日

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今回は「管理人も男性の着物についてもっと勉強しよう」をコンセプトに男性着物について、着物着付け師の「千葉」先生に寄稿していただきました!

今回のテーマは「場所と着物の組み合わせ」です。男性の着物のフォーマルからカジュアルのものまで、素材から組み合わせ、来ていける場所などを詳しくご紹介します。早速勉強していきましょう!

紋付

「礼装から普段着まで! シチュエーション毎のコーデを知る!」

着物に関心を持っていても「場所と着物の組み合わせ」に悩んでいらっしゃいませんか? その疑問を解決してくれる情報は探せばネットや本・雑誌などからたくさん入手できます。

ただ、色々と読み進めると、呉服屋さん目線、女性目線、ゆるいスタンスで楽しむ方目線、芸事をされてる方目線等、各々の立場で書かれているので、細かい所に違いがあり、さらに、文面にはその方の好みも現れてきますので読めば読むほど「何が正しいの?」と混乱しがちに…。

結局、男物の着物はどういうふうに着ればいいのか? 着物が初めての方はますます混乱することになります。

じつはそのような時、気をつけなければならないポイントは「フォーマルな場所に出かけるのか?」「そうでは無いのか?」という点だけです。

着物のコーディネートはこの視点が重要な意味を表していきます。

では、そのフォーマルな装いとは?

着物を説明している文章の中では、礼装・準礼装(もしくは略礼装)という言葉がよく見られます。どちらも、祝儀・不祝儀、相手への礼節を優先に考える場面での相応しい姿として、受け継がれているものです。それがフォーマルな装いになります。

これからさらに詳しく、フォーマルな場面とそうで無い場面についてお話していきます。一部、コーディネートの写真も載せておりますので良かったら参考にしてみてください。

それでは、まずは礼装から。

男性着物におけるフォーマルな装い

(1)最上の格である礼装

男性の礼装の基本はこちらです。

  • 黒羽二重 くろはぶたえ(羽二重:絹織物の事)の長着 ながぎ
  • 羽織 はおり
  • 角帯 かくおび
  • 仙台平 せんだいひらはかま縦縞 たてじまはかまをご覧になられた事があるのでは?それです)
  • 襦袢 じゅばんの襟と足袋は白

羽織の紋は5つ!これは必須です。素材は黒羽二重(絹)が良いですが、現代ではポリエステルで誂えたものも…。着物の下に着る襦袢の襟と足袋は白を合わせます。

着物の礼装は、主に下記の式典で着用します。

  • 結婚式の花婿
  • 結婚式の花婿の父親
  • 結婚式の仲人
  • 成人式
  • 大学の卒業式
  • 七五三での男の子の衣装
  • 喪の時

このように、礼装の着用シーンはかなり改まった場合に限られるのです。ただし、地域によって異なる部分もありますので注意が必要です。この様な式典に着物で出席される場合は、一緒に参列される年輩者に地域の慣習を踏まえて、事前に相談される事をお勧めします。

(2)礼装から格を下げた準礼装

準礼装は礼装に準じるものなので、格は少し下がりますがまだ堅苦しさが抜けません。とはいえ、礼装よりも着用する場面がぐっと広がります。

準礼装のコーディネートはこちら

  • 黒以外の色付きの長着
  • 羽織
  • 角帯
  • 袴のセット

素材には色羽二重 いろはぶたえお召 おめし、ポリエステル等があります。羽二重、お召はどちらも絹糸を使っていますが、これらの生地の違いは呉服屋さんのサイトでとても詳しく書かれてありますので割愛します。袴には無地ものや、生地自体に紋を柄として施されたものもありますよ。

準礼装では、三つ紋もしくは一つ紋を入れます。紋は、羽織に入れ、長着には入っていなくても大丈夫です。

男性は羽織を羽織る事が正装の条件ですが、もし、羽織を着ない場面だと、長着に入れておかねばなりません。

ここでの男性の着物は、女性で言うと訪問着や紋付の色無地と同格になります。
この装いで出かけるならば、下記のようなシーンです。

  • 結婚式に招待客として参列
  • 目上の方への改まった訪問
  • フォーマルがドレスコードのパーティー
  • 格式を重んじるようなパーティー等

紋の数が決められる場や、お茶席などその芸事の世界での決まり事がある場合などでは、参加される会の趣旨に合わせて着用してください。

男性着物でフォーマルではない装い

(3)準礼装からさらに格を下げたお洒落着・外出着

ここからはぐっと着物の出番が広がります。

素材としてはお召やつむぎ、ポリエステル等があります。これらの長着に角帯で、着流 きながしても良いですし(※着流し:羽織なしで、襦袢と着物に帯だけの状態)、冬ならば、羽織があった方が良いでしょう。袴も紋も不要です。

このよそおいいで出かけるならば、「プライベートでもラフすぎる格好はちょっとダメかな?」と思うような場面を想像してください。

例えば、コンサート、デート(行き先がオシャレな所)、新年会等です。 私の夫が、以前、西陣織の利休お召を紋無しで誂えました。足袋には黒やしまを合わせ、帯は角帯です。

準礼服

この装いで、日本庭園にデート、和がコンセプトの野外コンサート、毎年の年始の挨拶周り、初詣に出かけていますよ。

また、滅多に見かけませんが、子供の卒業式、入学式でお父さんが着物で出席される場合、長着と羽織の色は合わせたものが良いでしょう。足袋と襦袢の半襟は、白だと堅すぎるので黒で構いません。袴も堅苦しくなりますので無くて良いです。ただし、奥様も和装の場合は注意点があります。奥様が紋付色無地や訪問着をお召しになるならば、装いに合わせてお父さんも1つ紋を入れられる事をお勧めします。

コーディネートとしては、準礼装とお洒落着のちょうど中間ですね。

卒業式・入学式は、あくまでお子さんが主役!喜びを衣装の派手さ、凝ったアレンジで表現するのでは無く、落ち着いた雰囲気を作ってください。

なお、長着と羽織の色が合っている物としてウールのアンサンブルがありますが、ウールは普段着ですので、この場には似合いません。

ウール素材のものは、次にお話しする更にカジュアルダウンした場面で大活躍してくれます!

⑷カジュアルダウンしたお洒落着・普段着

さらにさらにカジュアルダウンしたお洒落着・普段着の素材としては、紬、木綿、綿、ウール、ポリエステル等で誂えた着物で、浴衣もここの区分に入ります。当然、紋なし、袴なしで構いません。

帯は角帯でも兵児帯 へこおびでも良いです。

自宅でお正月を迎える父親がよく紬の着物に絞りの兵児帯を合わせていました。本当は、アンサンブルなので羽織もあるはずですが行方不明に…。残念ですが、長着だけを紹介します。

長着

気候に応じて羽織を羽織っても構いません。また、帽子やブーツでアレンジも楽しめます。

紬を着て、帯の代わりにストールの組み合わせなんて、どうでしょう?

長着と帯

夏場は浴衣にポリエステルの薄くて細いタイプの兵児帯を合わせる事もあります。

浴衣

この様な装いで出かける場面は、飲み会やちょっとした外出、買い物、デート、盛り上がる系のコンサート、気心知れた友人との集まり等ですね。着ていく場面が1番広いので、存分に個性を披露してください。

着こなしのまとめ

ご紹介してきたように、(1)(2)のフォーマルな場面では「ぜひ受け継いで頂きたい決まり事」を頭の端に置いて頂き、それ以外の場面では着物を楽しむ事を重視して選ぶようにしてください。

例えば、友達との飲み会の場面。素材でオシャレをしていくならば、(3)のお召や紬を着て行きますし、コーディネートでオシャレをするなら、(4)のウールの着物に足元ブーツ、羽織の代わりにショールを巻いたって良いのです。

この様に「こんな風に着たい!」というイメージのままに着ていい、それが、(3)(4)のお洒落着・外出着です。何度も着て出かけるうちに、自分にとっての境界線「この時は、これを着る!」が見えてきますよ。

慣れる為には失敗を恐れず、とにかく着て外出しましょう!

これから着物を手に取る方へ

これから初めに手に取る着物として、既に着用の目的(特にフォーマル)が決まっているのであれば、それに合わせてイキナリあつらえるのもアリです。

リサイクル品からスタートして少しずつ着物の扱いに慣れていかれても良いですね。ちなみに、普段着でのオススメとしましては、扱い易さから夏の浴衣、冬のウールからのスタートを!まずは一着ずつこれらを手に入れられてはいかがでしょうか?

これまでの内容は、着物をスタートしやすい、春・秋・冬スリーシーズンの時期を思い浮かべながら進めてきました。もちろん、夏用の着物もありますが、長くなってしまいますので、あえて触れていません。ご了承ください。

所作も含め、体が慣れてから礼装・準礼装・マイサイズのお洒落着 しゃれぎあつらえていきましょう!

着物男子がますます増えてくれる事を願っています!

別サイトですが、コーディネートや着物の記事を書いております。
よかったらそちらのサイトもご覧ください。

参考:千葉真実の記事|着物買取のおと

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記事投稿者

KIMONO CLUB BLA’N’RED
着付師 千葉真実 ちば まみ
Facebook→https://m.facebook.com/blanred/
Instagram→mami.c_bla.n.red

まとめ

さすが着付けの先生ですね。個人的に知りたいと思っていた子供の卒業式などには「どういった着物を来ていけるのか?」または「着て行ってはいけないのか?」、「妻との組み合わせは?」といった点が丁寧に解説されていて、寄稿してもらってた甲斐がありました。
このシリーズは他にも掲載予定ですのでお楽しみに!

男性の着物が気になっているみなさんにも、ぜひ参考にしていただきたいと思います(^o^)

それではまた別の情報で、乞うご期待!